中学受験の国語において、多くの受験生が最も高い壁を感じるのが記述問題です。白紙のまま提出してしまったり、何を書いていいか分からず自分の感想を書き込んでバツをもらったり。あるいは、一生懸命に自分の言葉で言い換えようとして、肝心なキーワードを落としてしまう。こうした悩みは、武庫之荘校に相談に来られる保護者様からも毎日のように寄せられます。

しかし、論説文の記述問題には、算数の公式と同じくらい明確な解法が存在します。それは、解答のパーツはすべて本文の中に落ちている、ということです。

記述問題でやってはいけない作文

記述問題が苦手な生徒に共通する最大の特徴は、設問を読んだ瞬間に本文から目を離し、自分の頭で答えを考えようとしてしまうことです。彼らにとって記述とは「作文」であり、自分の意見や立派な教訓を述べる場になってしまっています。

しかし、入試国語における記述とは、決して作文ではありません。それは、本文に散らばっている正解の破片を集め、設問の要求に合わせて正しく並べ替える情報の再構成作業です。

採点者が求めているのは、受験生の独創的な意見ではなく、筆者が述べた論理を正確に引用し、過不足なくまとめる力です。この視点の転換ができるかどうかが、記述問題攻略の第一歩となります。

なぜ本文の言葉を使わなければならないのか

なぜ、あえて自分の言葉ではなく、本文の表現を優先して使うべきなのでしょうか。そこには入試という制度上の切実な理由があります。

第一の理由は、採点の客観性と公平性の担保です。何千人もの受験生を短期間で採点する際、採点者はキーワード配点表というものを使用します。この解答の中にAという言葉が入っていれば2点、Bという要素があれば3点、という具合です。受験生が良かれと思って自分の言葉に言い換えてしまうと、この採点基準から外れてしまい、内容は合っているのに点数がもらえないという悲劇が起こります。

第二の理由は、論理の厳密さです。論説文において、筆者は特定の言葉に独自の定義を与えて議論を進めています。そのキーワードを勝手に似たような言葉に置き換えると、筆者の論理的な意図が歪んでしまうリスクがあります。筆者が定義した言葉をそのまま使うことこそが、最も間違いのない、安全な解答への近道なのです。

本文の表現を組み替える3つのステップ

では、具体的にどのようにして本文の言葉を使い、解答を組み立てればよいのでしょうか。LOGIQUEが指導している、パズルを完成させるための3ステップを解説します。

ステップ1:設問の要求を分解する。

記述問題に取り組む際、まず最初に行うべきは、何が問われているのかを徹底的に確認することです。理由を問われているのか、具体的内容を説明せよと言われているのか、あるいは筆者の主張をまとめよと言われているのか。文末が「~から」で終わるべきか、「~ということ」で終わるべきかを決定し、解答の枠組みを先に作ります。

ステップ2:該当箇所のパーツを拾い集める。

次に、傍線部の前後や、同じ接続詞(つまり、しかし、例えばなど)で結ばれた箇所から、解答に組み込むべきキーワードを探し出します。論説文には必ず、言い換えの関係にある文章や、対比されている概念が存在します。それらを本文中から指さし確認するように抽出していきます。

ステップ3:論理の継ぎ目を整える。

拾い集めたキーワードを、論理が通るように接続詞で繋ぎ合わせます。ここで初めて、最低限の調整として自分の言葉(てにをは、や、接続の言葉)を使います。しかし、核となる表現はあくまで本文のままです。

具体例、難関校でも通用する言い換えの技法

灘中や甲陽学院といった難関校の記述問題では、単純な抜き出しだけでは対応できないケースもあります。しかし、その場合でも「本文の言葉を使う」という原則は変わりません。

代表的な技法は、具体と抽象の往復です。本文で長く説明されている具体的なエピソードを、同じ段落内や結びの段落にある、筆者がまとめた抽象的な言葉に置き換えて記述します。

また、対比構造の利用も極めて有効です。AではなくB、という対比がある場合、解答にはAとBの両方の要素を盛り込みます。例えば、「かつての日本人の価値観ではなく、現代的な合理性を重視する姿勢」というように、本文にある対比のキーワードをセットで使うことで、解答の論理的密度は飛躍的に高まります。

本文を信頼することが、記述力向上への第一歩

記述が苦手なお子様は、どこかで自分を表現しなければならないというプレッシャーを感じています。しかし、国語の試験において最も信頼すべきは、自分の頭の中ではなく、目の前にある本文です。

答えはすべて紙の上に書いてある。その確信を持って、本文の中から必要なパーツを探し出す宝探しのような感覚で記述に取り組めるようになったとき、国語の成績は劇的に安定し始めます。

LOGIQUE武庫之荘校の個別指導では、講師が正解を押し付けることはありません。生徒と一緒に本文を指で追いながら、どの言葉がパズルのピースになるのかを共に考え、発見するプロセスを大切にしています。自分で見つける根拠だからこそ、納得感があり、一生モノの技術として定着するのです。